市民Q&A

【目次】

Q&A1.【子供が通院先の歯科医院でMRSAに感染していると言われて】

Q&A2.【術後MRSA創部感染(保菌)した肉親の外泊時の家庭内感染への不安】

Q&A3.【MRSA感染(3+)での家庭内感染が心配】

Q&A4.【MRSAの菌量表示が分からない】

Q&A5.【MRSA保菌者が家族へ感染させる可能性はあるのか?】

Q&A6.【MRSA保菌を理由に転院を拒否されて】

Q&A7.【下顎骨MRSA骨髄炎難治化相談】 

Q&A8.【転倒による大腿骨骨折に伴う感染】

Q&A9.【MRSA保菌を理由とした老人保健施設からの退所勧告について】

Q&A10.【特養ホームへのMRSA保菌者入所拒否に遭って】

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 Q&A1.【子供が通院先の歯科医院でMRSAに感染していると言われて】

子供が歯科でMRSAに感染していると言われました。大きな病気もしたことがないのにと驚いています(1)感染していると、この子の人生にどんな影響があるのですか?人によって言う事が色々です。(2)除菌する方法はあるのでしょうか?(3)今後、何に気をつけて子育てすべきでしょうか?また、どのくらいの間隔で検査したらよいのでしょうか?(3)子供から家族に感染する可能性とその予防面での注意事項は?

MRSA感染症専門家(医学部教員)コメント】

MRSAは鼻腔から検出されたのですね。しかし、発症はしていない保菌状態ということですね?では、一般的に、保菌状態で抗菌剤は投薬しません。無闇な抗菌薬の投与は高度耐性菌を作るだけで、本当に発症した場合に治療に困るようになります。ですから、その危険性を避けるためにも発症していなければ抗菌薬は投与しません。また、鼻腔内に保菌していたとしても自然消滅する場合もありますし、健康人で保菌されている方の中には、何の影響もなく自然消滅してしまう場合も多々あります。しかし、治療中と言うことですから、何らかの炎症が起きている可能性があり、その程度によっては気を付けなければなりません。

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Q&A2.【術後MRSA創部感染(保菌)した肉親の外泊時の家庭内感染への不安】

先日、肉親が手術後のキズからMRSAに感染したことが検査でわかりました。本人に症状はなく保菌している状態だと思いますが、世話をしている人は、手袋エプロンを着用しています。主治医から、家には小さい子供がいることだし、小さな子供には抵抗力がないから一時的にせよ退院しないほうが良いのではといわれました。しかし、都合により一時的に肉親を連れて帰らなくてはなりませんが、家庭内ではどのようなことに気をつければいいでしょうか?傷口にさわらないことはもちろん、介護、おふろ、床、食事、など気になります。子供はまだ幼いので、あちこちなめるのも心配です。介護することで保菌したかどうかも調べた方が良いのでしょうか? また、家庭内を消毒した方が良いのでしょう?

MRSA感染症専門家(医学部教員)コメント】

創部感染の状態でしょうが、帰宅される時に創部をガーゼとフィルムで覆っていれば大丈夫でしょう。しかし、このまま退院されることはお勧めできません。一時帰宅の形がベストだと思います。創部感染をしている場合、その傷口が開いてしまう危険性があるからです。傷口がしっかり塞がるには、やはり除菌が必要です。以上のような処置をして頂ければ、お子さんに対しても、ほかのことに関しても全く心配する必要はありません。家庭内の消毒の必要もありません。しかし、あくまで一時帰宅の対応が必要だと思います。

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Q&A3.【MRSA感染(3+)での家庭内感染が心配】

入院中の肉親がMRSA(3+)に感染しました。私の子供(乳児)は現在、風邪をひいているのですが、接触する機会が多く感染するのではと思い心配です。もし、感染すると、どのような症状があり、また、どうすれば感染予防が出来るでしょうか?

MRSA感染症専門家(医学部教員)コメント】

どの場所からMRSAは検出されたのでしょうか?手術部位の創部、鼻、喉、痰? お子さんに感染する危険性は、極めて少ないと思います。また、MRSAが移ったとしても、鼻腔内か咽頭内の保菌に留まり、発病することはまずありません。お子さんが保菌したとしても成長に合わせていなくなると思います。健常なお子さん(風邪くらいでは大丈夫です)にとって、MRSAは雑菌と同じ程度でしかありませんから。 

【看護師(外科系病棟勤務歴8年)コメント】

どの部位に感染していて、感染による症状はおありなのでしょうか?MRSAに感染したといっても、感染している部位や保菌状態なのか、発症しているのかにより、対応が異なります。おそらく保菌状態なのではないかと仮定し、コメントしますが、そうであれば、お子様に対しての感染は神経質になる必要はありません。むしろ、抵抗力の弱くなっている親御さんに風邪をうつすことになることの方が深刻ではないでしょうか。お子様の風邪が治るまでは病院まで連れて行くことは避けたほうが賢明かもしれません。具体的な感染対策としましては、面会前後に手を洗う、うがいをするなどしていただければと思います。

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Q&A4.【MRSAの菌量表示が分からない】 

脳梗塞で入院しています肉親が、主治医よりMRSAに感染している(+1)と告知されました。(+1)の意味は何でしょうか?肉親の介護に通っている家族も高齢者で肺がんの外科摘出手術を受けており、現在も治療を受けています(若干の抗癌剤も使っていると思われます)。このような家族が介護を行っていてもMRSAに感染する問題ないでしょか?MRSAは、何処にでもいて体力の弱くなった人にのみ発症する、血液検査で判明するものでしょうか?その他参考になることがありましたらご教授願います。

【看護師(国立病院外科系病棟勤務歴9年)コメント】

+1)というのは、MRSAの菌量です(1万コロニー数/1㎖以下)。MRSAの菌量は「1+1万コロニー数/1㎖以下」、「2+1万~100万コロニー数/1㎖以下」、「3+100万コロニー数/1㎖以上」の3段階で表示されます。

通常は「3+」ですと概して発病状態のことが多く(無発症の場合もあります)、「1+」はただ単に保菌した問題のない状態と判断されます。ところで、ご家族のMRSAはどこからでているのでしょうか?床ずれなどができていませんか?それとも痰などからでたのですか?おそらく、鼻腔や喉にMRSAがついているだけの状態なのではないですか?そうであれば、保菌しているだけの状態です。

介護されますご家族は現在も抗がん剤の治療中ではありませんね?現在治療中か、治療終了直後の免疫力が低下している状態でなければ、特に面会を制限する必要はないでしょう。しかしながら、他の面会の方もお見舞いの前と後に石鹸と流水で手洗いをしましょう。MRSAに感染する方は、体力や免疫力が低下しているかたですから、周囲の人間が他の菌を運びこまないようにきちんと手洗いする必要があります。

MRSAは、ある種の抗生剤に対して耐性を持つ黄色ブドウ球菌です。黄色ブドウ球菌はヒトの常在菌です。通常の生活ができるかたは、菌がついただけでは発症しませんが、体力や免疫力が低下している方に対しては発症することがあります。また、黄色ブドウ球菌は食中毒菌としても代表的な細菌の一つになっています。医療現場での通常の検査方法は、感染部位から綿棒で拭い取ってMRSAを選択的に培養する培地に接種して培養することが多いかと思います。あえて血液検査を行う場合は、実際に炎症反応がでているのかを確認するための検査(CRP値や白血球数を見る)か、すでに菌が血液中に入ってしまった菌血症や敗血症の可能性が疑われる場合に行われます。

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Q&A5.【MRSA保菌者が家族へ感染させる可能性はあるのか?】

術前にMRSA検査をしました。鼻に綿棒のようなものを入れた検査でした。その検査結果で、MRSAが陽性と判断されました。それを聞いたときは、よくわからなかったのですが、あとでMRSA陽性というのは、とても大変なことだと知りました。私は、MRSA保菌者ということになるのでしょうか。その場合、これから私が日常生活に気をつけることなどあるのでしょうか。私にはまだ幼い子供がいるのですが、子供や夫にMRSAをうつしたりしないのでしょうか。これから妊娠・出産などは不可能なのでしょうか。

MRSA感染症専門家(医学部教員)コメント】

ご心配なく、それほど大した問題ではありません。このままでも普通の生活を続けて頂いて、いっこうに差し支えありません。健康正常人の鼻腔保菌者の方も結構、いらっしゃいますし、普通の生活でも何の問題も生じていません。どうしても除菌したい場合は、ムピロシンという抗菌剤で簡単に除菌できます。しかし、このような抗菌剤を使わなくても自然に消滅する場合が多く、そのほうが自然で良いのではないでしょうか。気持ちの問題ですから、心配で精神的にまいってしまうようなら、担当医にその旨ご相談なさり、除菌してもらってください。もちろん、家族に伝播することはほとんどありませんし、お子さんを産むことについて何の支障もありません。

【看護職(外科系病棟勤務歴9年)コメント】

MRSAの保菌が大変なことであると思われたのは、どちらからの情報でしょうか?医師からそのように説明されましたか?MRSAは、抗生剤に耐性をもつ黄色ブドウ球菌で、この黄色ブドウ球菌は私たちが生活する場にもある常在菌です。抗生剤に耐性をもつため、抵抗力が非常に低下している状態のかたに関しては、発症する危険がありますが、通常の生活を送れる方はまず発症する危険はありません。また、保菌していても自然に消えることもあります。どうしても気になるのでしたら、主治医にご相談して除菌されるのもひとつの方法かと思いますが、自分の健康管理に留意され、免疫力が低下しないような生活を送られることも薬に頼らず、ご自分で実行できることかと思います。MRSAを保菌していても、日常生活は普通に送ってかまいません。食器や洗濯も別にする必要もありません。

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Q&A6.【MRSA保菌を理由に転院を拒否されて】

高齢な肉親のことで相談します。脳梗塞の症状があったため、自宅近くの病院に入院しました。入院直後から1ヶ月ほど昏睡状態が続き、その後徐々に意識が戻り、嚥下障害はあるものの流動食を摂っています。急性期を脱し、リハビリ病院へ転院する準備をしていた矢先に、院内感染でMRSAが鼻腔・口腔に見つかったので、転院することは出来ませんと言われました。今のところ保菌者ということで、MRSAによる余病を発症している様子もなく、イソジンうがい液での口内殺菌と鼻腔に薬剤を塗布しています。そして、感染者は他の病院に紹介出来ないので、自宅へ帰るより方法がありませんと言われました。また、感染者は帰ってもデイケアやショートステイ等の利用を断られるかもしれませんといわれ途方に暮れています。当初より自宅へ連れ帰ることを予定し、介護認定度も5と評価され、自宅でのケアを計画し、段取りを進めていた矢先に医師から介護サービスも受けられないかもしれないと言われ、どう対応して良いのかわからないでいます。

MRSA感染症専門家(医学部教員)コメント】

鼻腔内にMRSAを保菌しているお年より結構いらっしゃいます。保菌状態で転院が不可能ということはありませんし、公的機関に御相談なされば、転院を含めてデイケアやショートステイ等の問題も解決されるはずです。少し前までは、多くの誤解がありMRSA保菌者は敬遠されていましたが、現在では保菌者であっても入院や入所、各種サービスが断られることは禁じられています。また、MRSAの知識と情報を正確に把握できていれば、このような問題も発生しなかったでしょう。残念なことですが、市町村区役所内に設けられている相談窓口を訪ねて下さい。

【訪問看護師(訪問看護ステーション所長・ケアマネージャー有資格)コメント】

ご家族がMRSAの保菌により、在宅療養するうえでのサービスでさまざまな制限を受けると医師から説明されて困惑されているのでしょうね。在宅では、現状として事業者によって対応できない場合サービスを断られることがありますが、すべての事業者がそうであるわけではありません。まずは、感染症に関する知識をもつケアマネージャーを探すことが必要です。その事業者に対応できる事業者を紹介してもらうなどで全くサービスを利用できないという事態は防げるのではないかと思います。加えて、在宅でのご家族の対応も通常どおりでかまいません。直接ケアするヘルパーさんなども前後の手洗いを十分することで他のご利用者にうつすこともないでしょう。保菌はそこに菌があるだけですから。

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Q&A7.【下顎骨MRSA骨髄炎難治化相談】 

中咽頭ガンの治療で放射線60gy照射。経過良好でしたが,下顎骨骨髄炎で消炎手術。さらにその後に下顎骨腸骨移植後にMRSAに感染.退院後も傷口が塞がらず以後消毒のため週2回通院。 今年プレート除去、腐骨除去,再建(植皮,ミニプレート固定)手術。また再感染したので近く下顎骨離断手術と告げられました。現在は家で毎日イソジンにて消毒,ゲルを塗り、週2回通院。ミノマイシン50mg朝夕1錠服用。担当医は退職や移動で3人目。手術前の説明では予後再感染が考えられるとあり、同意しています。転院しても同じ事なのでしょうか。検査値プラス2です。

MRSA感染症専門家(医学部教員)コメント】

同じような症例が口腔外科関係では多いようです。MRSA感染のため再建オペも成功しなかったようですが、更にオペを施行しても同じような結果になる恐れが充分にあります。これは、患者さん本人よりもオペ術者に伝えてもらいたのですが、オペ終了、縫合前に開けている患部全面に0.1%ピオクタニンを全面に塗布して下さい。できれば、縫合しないで一週間程度この0.1%ピオクタニンの塗布を行っていただくとMRSAは除菌できると思います。また、ミノマイシンの感受性試験は行って感受性(薬剤に殺菌効果が期待出来る)になっているのでしょうか?もし医師から説明を受けていませんようでしたら感受性試験の結果をお聞きになって下さい。また、行っていないようでしたら感受性試験を行って貰って下さい。全身投与しても口腔の場合、患部に薬剤の到達が悪いことを考えても直接的な消毒の方が効果は高いでしょう。全身投与を余儀なくされる場合は、感受性試験で感受性のある抗菌剤を選ぶことは必須条件です。また、リファンピシン+ST合剤の投与も有効です。毎日消毒をされているようですが、内部感染ですので本質的解決にはつながりません。オペによる感染部位(フォーカス)での除菌が必要になります。また、転院しても同じようなことを繰り返すだけではないでしょうか?(これだけの治療が出来るのですから、この病院はそれなりの技術を持っている病院だと思います。)

消毒方法として

1. 0.1%ピオクタニン

2. アルベカシン(全身投与剤ですが、生理食塩水に1mg/mlになるように溶解後、患部に散布 

全身投与(退院時)                                                                                                              

1. リファンピシン+ST合剤 (経口で可)

全身投与(入院時)

1. アルベカシン+ユナシン

2. バンコマイシン+イミペネム

3. テイコプラニン+イミペネム

4. リファンピシン+ST合剤+ミノサイクリン 

何れも併用投与による相乗効果が現れます。患部への移行生が低いため、併用による効果(低濃度でも抗菌力が発揮する)増強を計るべきです。

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Q&A8.【転倒による大腿骨骨折に伴う感染】

心臓弁膜症の内科治療から退院直後に風呂場で転倒し左大腿骨を骨折。すぐ入院したが年末で、正月休み年明けを待って施術(その間左足を牽引)。術後の説明で、骨頭部の骨がもろく、また年始で手術に使用するプレート等の問屋が休みで、補強用のプレートとボルトの種類が限られうまく固定できなかった(その後2度目の手術で骨頭部位をボルトとプレートで固定できた)。しかし、リハビリ開始10日頃に術部傷口から滲出液があり、かつ骨も癒合せず、原因は術部出血と考えられ開放中の筋膜を縫合。また、患者は心臓病のため強い痛み止めを使えず、術後痛がる姿に接して短期間に3回に及ぶ手術に不信感を抱く旨を担当医に伝えました。そして3度目の手術で中に溜まっていた滲出液を調べたところ、表皮ブドウ球菌が微量見つかり、この時点で院内感染による深部SSIではないかとの疑問を抱き自分で文献を調べ、術部感染があると骨はつかず、かつ有効な治療手段がないことを知りました。3度目の術前説明では、骨が付かないことと表皮ブドウ球菌との関連性で説明はなく、骨が付きにくい体質の人もいるとのことで納得出来ませんでした。現在患者は、抗生剤の点滴を24時間受けています。骨が付かないとプレート等を除去し寝たきりになる可能性もあるとのことで大変心配です。表皮ブドウ球菌による院内感染、深部SSIは仕方のないことで泣き寝入りしなければならないのか、また最初の手術内容に問題はなかったのかを自身で調べても分りませんでした。このまま骨が付かなかった場合や今現在の治療について、補償に関してはどうなるのか?訴訟は考えていませんが、ただの骨折で3度、恐らくは4度の手術に耐えた挙句、骨が付かないまま寝たきりとは納得出来ないでいます。

MRSA感染症専門家(医学部教員)コメント】

まず、表皮ブドウ球菌は皮膚表面に常在すること、血液を採血して血中に菌がいるかどうかを調べるとき、皮膚表面からの表皮ブドウ球菌が入り込んでしまい、疑似陽性とでてしまうことが良くあり、これらのことから、浸出液中に微量見つかった表皮ブドウ球菌が、本当に感染しているのか、障害になっているのか疑問があります。感染菌として定着し、かつ骨形成に影響を及ぼしているのであれば、菌量はもっと多いはずです。この点について、感染菌か汚染菌かの判断がつきません。微量であれば、一般的には汚染菌として処理します。心臓弁膜症の入院期間がどれほどかかったかは良く解りませんが、成人でも1ヶ月も横になっていれば骨密度は急激に減少してしまいます。特に御高齢者であれば、その骨密度は相当に減少していると考えざるを得ません。その時点での骨折ですが、ご高齢と骨折場所を考えると、オペせざる得ない状況だと考えられます。時間が経てば、骨折による炎症が拡大し、骨だけでなく回りの組織にも悪影響を与えてしまいますし、当然感染症も発症します。その時点で感染症が発症すれば、容易に骨髄炎へと進展してしまいます。補償の点ですが、表皮ブドウ球菌が直接的な原因であれば何らかの補償は引き出せると思いますが、それが汚染菌であれば補償という問題は難しいでしょう。恐らくどの病院に行っても同じような処置になったと考えられるからです。つまり、落ち度という点で、何が落ち度かを訴えられないと感じるからです。

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Q&A9.【MRSA保菌を理由とした老人保健施設からの退所勧告について】

要介護度4の高齢者のことで相談があります。現在老人保健施設に入所していますが、咳や痰が結構出ます。結核菌は陰性だが、MRSAが陽性になったので退所して欲しいと言われました。家庭で介護するのが本筋かもしれませんが、家人にも仕事があり24時間介護することが不可能です。こういった場合、どう対処すればよいでしょうか。

MRSA感染症専門家(医学部教員)コメント】

MRSAが検出されたからといって、退所する必要は全くありません。保健施設だからこそ、MRSA保菌者に対しても介護する必要があると思いますし、退所を言いだすことこそ、時代錯誤に陥っていると思います。といっても、人間関係やら何らかのしがらみによって、退所の必要がある場合は、逆に退所先を教えてもらって下さい。また、市町村区役所に相談できる窓口があるはずですから、そこに相談されても良いと思います。

【訪問看護師(訪問看護ステーション所長・ケアマネージャー有資格)コメント】

保菌状態であると仮定してコメントいたします。MRSAの保菌者であることを理由に退所を求められたとご相談にありましたが、入所時の契約書には感染症などについては記載がありますでしょうか? それとも、退所を求めるときはどのような場合と記載されていますでしょうか? 契約書の内容をまず確認してみてください。それに加えて、市町村区役所の介護保険課に苦情として相談してみてください。

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Q&A10.【特養ホームへのMRSA保菌者入所拒否に遭って】

現在要介護3の一人暮らしの母親(78歳)。特養ホームの入所を申し込んで2年、ようやく順番が来て、ほっとしました。ところが入所に際し健康診断をしてほしいとのことで、いわれるまますぐに検査をしてもらいにいきましたところ、MRSA+2の結果が出ました(鼻粘膜の検査)。MRSAの何たるかも知らずそのまま診断書を送付したところ、入所を断られ困惑しています。過酷に心筋梗塞で入院の経験あり。最近では右上腕部骨折で整形外科へ手術入院しました。毎週2回デーサービスへ行っています。どこでどのように感染したのかもわかりません。特養ホームのほうでは治療してきてくださいと言うのですが、治療は可能なのでしょうか?どのような治療をすればよいのでしょうか。時間はかかるのでしょうか?また、これを理由に入所を拒否できるのでしょうか?すべてのホームがそうだとしたらもう入所は不可能でしょうか?

MRSA感染症専門家(医学部教員)コメント】

MRSAの鼻腔内保菌ですね。除菌は可能です。一般的に行われるのはムピロシン軟膏を鼻腔内(鼻の穴の前部)に塗ることで早ければ2~3日で除菌できます。多くの方がこの方法で鼻腔内のMRSAを除菌しています。また、倫理的に入所拒否は問題がありますが、そういう施設が多く存在することは事実です。出来れば、入所後、問題が発生しないように除菌されてから入所なさっては如何ですか。それほど、難しい処置ではありませんから。なお、入所後、除菌して下さる施設も存在します。要は、MRSAを理解している施設かどうかの問題だと思います。

【看護職(訪問看護ステーション所長)コメント】

鼻腔内の保菌しているのですね。MRSAの感染に対しての対応については、施設でどのように取り扱うかによって異なります。ですが、MRSAに感染していても、対応できる施設も増えてきていることは確かです。時間は必要とするかもしれませんが、適切な治療をすれば、除菌できますから、それから入所された方がお母さまも安心かもしれませんね。

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